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宮澤清治の防災歳時記

真夏の山火事

NHK放送用語委員会専門委員
元気象庁天気相談所長
宮澤 清治

猛暑には山火事が付き物

写真1 山形県新庄市郊外を流れる最上川
写真 栃木県足尾町の夏雲(雄大積雲)
  昨年(1995)、一昨年(1994)と2年続きの猛暑には、うんざりした。一昨年は6月の梅雨から8月にかけて猛暑が続き、気象観測史上最も暑い夏となった。昨年は7月下旬の梅雨明けから8月末までほとんど途切れることなく暑さが続き、北日本を除いてまさに砂漠並みの暑さだった。
  暑さは、人々の暮らしに多くの影響を与えた。エアコンなどが売れに売れて景気の回復に猛暑効果がみられた。
  困ったことは、日照りと水不足で林野が乾きに乾いて全国的に山火事が多発したことで、猛暑に山火事が付き物となってしまった。
  「猛暑になれば救急出動が増えるのは、ある程度うなづけるが、火災件数が急上昇して新記録になるのはどういうわけか。94年7月1日から45日間で実に190件の火災が発生し、前年同期に比べて116件も増加した。
  増えた原因は、集中的に放火が増えたわけでもなく(むしろ放火は減少している)、気象上、乾燥状態が続いているわけでもなく、ただ毎日暑いだけなのである。
  火災の種別でも建物火災、林野火災、その他の火災と総合的に増えているが、なかでも屋外物件などのその他の火災が群を抜いて増えている。
  強い日ざしでカラカラになった草などにタバコ火や火の粉類が接触すると、すべて発炎ということになるのである」(神戸市消防局予防部長・西田和馬氏、広報誌「雪」)。
  「私のゴルフ場では夏に雨が降らないのは例年通りだが、1994年のように空梅雨になると夏を乗り切るための水の確保ができない。そのまま、眞夏になってグリーンが焼けて、フェアウェーでは火を近づけると燃えてしまうほどの乾燥だった。」(グリーンキーパーの話)。


山火事は夏も発生しやすい
写真1 山形県新庄市郊外を流れる最上川
図 林野火災の最も多発する月
(1988〜92年の都道府県別の統計、消防庁『火災報告』から作成)

 統計によると、林野火災(山火事)は2〜4月を中心とした春先に集中し、この3か月間に年間発生件数のほぼ半数が発生するが、8月にも発生件数の小さなピークがある(本誌No.29、1992年夏)。
 筆者が作成した林野火災の最も多発する月(新版NHK気象ハンドブックに掲載)をみると、九州から関東にかけては2〜3月、日本海側と東北地方は4月、そして北海道は5月である。春は空気がよく乾くことのほか、山の雪が消え、山焼きや山菜を採るために山に入る人が増えるためでもある。
 図をみると滋賀県で8月が最も多発しやすくなっている。図には現れないが他府県でも眞夏に発生しやすい。猛暑が続くと物がよく乾き、山火事が起こりやすい。それに小河川が干上がり消防水利が不足するうえに、土壌内部まで乾燥して完全消火も困難となる。



物が乾くということ

  土壌や草木の葉など一般に物から水分が蒸発して乾くという理屈を考えてみよう。蒸発の遅速を表す数式によると、蒸発は次の場合に盛んになる。
(1)空気が乾いているとき
    春先やフェーン現象など空気が乾くときは物もよく乾く。
(2)気温の高いとき
  暑い夏は、湿度が高くとも気温が高いだけで物が乾く。
(3)風の強いとき
  曇って寒くとも、風が強ければ洗濯物はよく乾く。風だけ運んでくる台風のときも乾く。
(4)気圧の低いとき
  気圧の低い山頂は平地よりも物がよく乾く
  ●大火のあとは雨近し
  ●山火事の翌日は雨となる
  昔のことわざだが、気象学的に説明しにくい。無理してこじつければ、フェーン現象をもたらした低気圧や台風が過ぎ去ったあと、前線が来て雨になりやすいということだろうか。反対に「大火の翌日は天気がよい」ということわざもあるから、昔からの言い伝えを理解することは難しい。

消防科学総合センター季刊誌「消防科学と情報」1996年夏号より