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火災原因調査シリーズ(42)・営業中の焼肉店から出火した全焼火災

◇ 火災原因調査シリーズ(42)
営業中の焼肉店から出火した全焼火災
焼肉店の無煙ガスロースターから出火した火災事例

東京消防庁予防部調査課  


1 はじめに

 焼肉店に設置されている無煙ガスロースターは、1980年頃から販売され、肉を焼くと同時に煙を排出してくれる画期的な機器である。本火災事例は、無煙ガスロースターの排気ダクトの清掃不良により、営業中の店舗が全焼したものである。

2 火災概要

出火年月平成18年4月
焼損状況建物 全焼
焼損物件準耐火造1階建、延171屬里Δ121崗涜

3 出火時の状況

 焼肉店の従業員は、サービスカウンター付近にいたところ、天井から「ガタガタ」と大きな音を聞き、3人の客が焼肉をしている9番テーブルを見ると異常に煙が出ているのに気付いた。近寄ると、9番テーブルから炎が上がっていたので、客を避難させた後、店内設置の粉末消火器を噴射した。
 焼肉店の前を通行中の男性は、焼肉店から客と従業員が避難するのを目撃し、店内を見ると、中央付近のテーブルから白い煙が出ており、建物の屋根上からは黒煙が出ていたので火災だと思い、携帯電話で119番通報(第一報)した。
 9番テーブルを初期消火した従業員は、焼肉店の電話で119番通報(第二報)したところ、隣の8番テーブルの下方からも炎が出ているのに気付いた。このとき、焼肉店の前を車で走行していた男性も火災に気付いて駆付け、粉末消火器を用いて消火を試みたが、店内に煙が充満し始めたため、危険を感じ、屋外へ避難した。

4 現場見分状況

(1) 出火した焼肉店は、平成6年に営業を開始したチェーン店の一店舗で、15卓あるテーブルには下方排気方式による無煙ガスロースターが設置されている。
 無煙ガスロースターは、燃料としてプロパンガスを使用し、ガス消費量は2.39kWであり、構造は図1のとおりである。焼肉の際は、無煙ガスロースター内の炭火を用い、炭火がおきた後は、無煙ガスロースターのバーナは止め、テーブルに設置されている送風ファンの風量により、炭火の火力を調整している。
 排気ダクトは、1番から4番テーブル、5番から12番テーブル、13番から15番テーブルの3系統に分かれており、屋上に設置されているそれぞれの排気ファンにより排気している。
 出火前は、9、11、12番テーブルで客が焼肉をしていた。(図1、2参照)

図1 無煙ガスロースターの構造図

図2 客席と排気ダクトの状況

(2) 客室内を見分すると、全体が焼損し、天井材が落下し、軽量鉄骨、躯体の鋼鉄製梁が露出している。5番テーブルの上方付近の梁は、赤茶色に変色し、軽量鉄骨には、赤茶色の変色と変形が認められる。
 15卓あるテーブルを比較見分すると、テーブルの天板が焼失し、最も焼損しているのは、5番テーブルである。(写真1、2、図2参照)

写真1 客室の焼損状況

写真2 客室天井の焼損状況

(3) 焼失した天井材等の残渣物を除去し、見分する。5番テーブルと8番テーブルの間には、間仕切壁があり、内部に排気ダクトが設置されている。間仕切壁は、ベニヤ張りで、5番テーブルと8番テーブルを起点として焼失している。(写真3、4参照)

写真3 9、8番テーブルの焼損状況
点線部分は、間仕切壁の焼失範囲

写真4 5、6番テーブルの焼損状況
点線部分は、間仕切壁の焼失範囲

(4) 焼肉をしていた9番テーブルと、最も焼損している5番テーブルについて子細に見分を進める。テーブルの天板を取り外し、バーナ、オイルコレクター等の無煙ガスロースターの構成部品を見分するも、顕著な油塵、炭化物は認められない。
 各テーブルには、バーナの点火、炭火調節用の送風ファンを制御するため、100Vの電源線があり、9番テーブルについては、焼損は認められず、5番テーブルについては、電線被覆が焼失し、芯線が露出しているものの短絡痕は認められない。
(5) 5、9番テーブルに設置されている防火ダンパー、排気ダクトを見分する。9番テーブルの防火ダンパーは、温度ヒューズが溶融し、レバーが排気ダクトに対して90°の位置にあるのに対し、5番テーブル側は、温度ヒューズが溶融しているもののレバーは45°の位置にある。
 排気ダクト内部を見分すると、両者共に炭化した油塵が多量に堆積しており、9番テーブルの防火ダンパーは閉鎖されているものの、5番テーブル側は、半開状態であり、完全に閉鎖されていない。(写真5〜10参照)

写真5 9番テーブルの排気ダクトと防火ダンパー

写真6 9番テーブルの防火ダンパー

写真7 5番テーブルの排気ダクトと防火ダンパー

写真8 5番テーブルの防火ダンパー

写真9 9番テーブルの排気ダクト内部

写真10 5番テーブルの排気ダクト内部

(6) 5番テーブル付近の間仕切壁を剥し、排気ダクトを見分する。排気ダクトには、断熱材が巻かれており、5番テーブル付近の焼損が強く、排気ダクト上にある電気配線に短絡痕が認められ、この短絡箇所付近では、断熱材が焼失している。
 巻かれている断熱材を剥し、排気ダクトの変色状況を見分すると、9番テーブルから排気側になすび色の変色が見られる。排気ダクトを切り開き、内部を見分すると、炭化した油塵が多量に堆積している。(写真11〜13参照)

写真11 5番テーブル横の排気ダクト

写真12 6、9番テーブル付近の排気ダクトの変色状況
点線から排気側に変色が見られる。

写真13 5番テーブル付近の排気ダクト内の油塵

5 出火原因

 出火原因は、9番テーブルで焼肉をしていた際に、火の付いた油が排気ダクト内に吸い込まれ、排気ダクト内に堆積していた油塵に着火したものである。
 延焼拡大原因は、排気ダクト内に油塵が大量に堆積していたため、排気ダクトが過熱しベニヤの間仕切壁へ延焼、さらに、5番テーブルの防火ダンパーが完全閉鎖しなかったためテーブル方向へと延焼したものである。当焼肉店は、開店以来排気ダクト内の清掃をしていなかった。

6 おわりに

 本火災発生後、当庁では、管内にある同系列チェーン店63店舗について緊急査察を実施し、類似火災の未然防止を図ったところである。防火ダンパーや排気ダクトの定期的な清掃を行うことが火災を予防する重要なポイントである。本事例をふまえ、維持管理の重要性を事業者側に再認識させ、同種火災の防止を図っていくことが必要である。