防災展示場
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災害写真データベース

3 火山噴出物による直接的災害

草津白根山のガス災害とその後の対策

 1971年12月28日、白根山山頂から殺生河原へのコースを滑ってきたスキーヤーが振り子沢を降りやや平坦になった場所で倒れた。これを見た別のスキーヤーが助けようと近づいてまた倒れ、計6名が死亡するガス災害が発生した。事故現場近くでは、ボーリングによって噴出させた火山ガスを沢水を貯めた水槽に導いて温泉を造成していた。火山ガス中の主成分である水は沢水に吹き込まれたことで全て取り去られ、水に溶けきれない高濃度のH2SとCO2が水槽から溢れ出ていた。事故当日は無風曇天であったため、このH2SとCO2が事故現場の地表近くに滞留していたことが原因で、災害発生は人為的要素が強い。この災害の場合は、原因となった温泉造成を停止し、ボーリング孔を閉塞することで解決された。これに比べて1976年に本白根山へ登山中の3名が死亡した事故は、登山コースに低温で非常に濃度の高いH2Sを噴出する噴気孔があり、噴出したH2Sが無風・曇天の気象条件で地表近くに滞留していたことが原因であった。この付近一帯は、以前からマグマからの火山ガスが地表に到達するまでに地下水などで冷却され、95%以上あった火山ガス中の水が取り去られ、低温で高濃度のH2SとCO2が噴出している変質帯で、ガスの噴出が視認できない場所である。
 このガス災害を契機に、地元自治体は草津白根山一帯の噴気地帯の調査を実施し、それぞれの場所の大気中のH2S濃度によって危険度をランクづけしたH2S危険予想地域図を作成した(図1.3.20)。この結果を踏まえて、地元自治体は特に危険度が高く、かつ一般の人が立ち入る可能性が高い場所である東麓の殺生河原と、西麓の万座地域に計11のH2Sセンサーを設置し、H2Sが高濃度になった場合に警報を発するシステムを設置するとともに、立入禁止の柵と情報板を設置した。これらの対策を講じた後は、今日までガス事故は発生していない。同様のH2S検知システムは、1979年に噴火した木曾御嶽山山頂に設置されている。阿蘇山では、中岳の火口近くにSO2の検知・警報システムが設置されている。外国では、インドネシア・ディエン高原にCO2センサーが設置されている。
図1.3.20 草津白根山における硫化水素ガス危険予想地域図(部分)