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5 避難に関する基礎知識

2.的確な避難のために考慮すべき事項

住民避難の特性

 洪水時の住民避難は、個人単位の行動というより世帯内での役割分担のなかで行われることが多い。例えば世帯主に相当する年代の男性は、高齢者や年少者などの災害弱者を優先的に避難させ、自らは浸水に備えた被害軽減行動を取るなど、世帯内において明確な性・年齢役割分担が存在している。
 図2.5.15は、平成10年8月末北関東・南東北豪雨災害時の郡山市民の避難行動を見たものである。この図は避難勧告・指示の発令時において、何らかのかたちで避難を行った世帯の中で、優先的に避難をおこなった者(優先避難者)とそれ以外の者(非優先避難者)の比率を、性別と年齢別に示したものである。これによれば、年少者や高齢者などの災害弱者は、世帯内において優先的に避難を行っており、その一方、30歳代から50歳代の男性(その多くは世帯主と思われる)は、他の世帯員を優先避難させた様子が明らかに読みとれる。また、女性の優先避難者の割合は、男性のそれに比べて各年代とも高い。これは、年少者や高齢者といった優先避難の世帯員と行動を共にすることに基づくものである。
 優先避難した年少者や高齢者と、行動を共にした世帯員の性別年齢別の分布を、図2.5.16及び図2.5.17において見てみると、まず、図2.5.16では、優先避難した年少者と行動を共にするのは、25歳から44歳の女性が多くを占めており、母親が子供を連れて優先避難した実態が読みとれる。また、図2.5.17を見ると、優先避難した高齢者と行動を共にするのは、35歳から64歳の女性が多く、高齢の親を連れて優先避難した様子が読みとれる。また、高齢者が年少者と共に優先避難する様子も見られるが、これは孫を連れての優先避難と解釈される。
 このように、洪水発生時における世帯の避難行動に関しては、明確な性別と年齢別の役割分担が存在しており、年少者や高齢者などの災害弱者は、優先的に避難を行っていること、女性はこれら優先避難者の付き添い、あるいは引率をする形での優先避難となっている一方で、世帯主に相当する年代の男性は、他の世帯員を優先避難させるなどの様子が確認される。
図2.5.15 性別・年齢別にみる優先/非優先避難者の割合

*37 及川康,片田敏孝,淺田純作,岡島大介;「洪水避難時における世帯行動特性と世帯員の役割分担に関する研究」,「水工学論文集」,第44号,p319−324,(社)土木学会,2000

図2.5.16 優先避難した年少者と行動を共にした世帯員

*37 及川康,片田敏孝,淺田純作,岡島大介;「洪水避難時における世帯行動特性と世帯員の役割分担に関する研究」,「水工学論文集」,第44号,p319−324,(社)土木学会,2000

図2.5.17 優先避難した高齢者と行動を共にした世帯員

*37 及川康,片田敏孝,淺田純作,岡島大介;「洪水避難時における世帯行動特性と世帯員の役割分担に関する研究」,「水工学論文集」,第44号,p319−324,(社)土木学会,2000