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2 地震と地震災害

表層地質が地震動に与える影響-1

 日本の多くの都市は沖積平野上に存在し、平野の周辺は岩盤を地表近くにもつ山地によって囲まれている場合が多い。このように、多くの人間が住む場所の表層地質の環境は、岩盤のくぼみに堆積物が厚くたまった堆積盆地構造をなしている。
 表層地質が地震動に及ぼす影響の中で、重要なものの1つは、堆積層による地震波の増幅(→地震波のスペクトル・地盤(堆積層)による地震波の増幅・共振現象)である。図1.2.6は、実際の観測記録をもとに、S波の増幅効果を例示したものである。地層断面図で最も左にある地表観測点と地中観測点の波形を比べると、堆積層によりS波が増幅される様子がよくわかる。また、地表にある3つの地点での地震動を見ると、観測点付近の地盤条件と観測点の位置の関係が、増幅の程度を大きく左右していることもわかる。従って、地震被害想定の精度向上のためには、対象地域の地下構造を詳細に知っておくことが重要である。
 どの周期の地震波がどの程度増幅されるかは、堆積盆地に入射する地震波の特性、堆積盆地の構造(堆積層の厚さとその地震波伝播速度の分布、堆積層の下にある岩磐の地震波伝播速度、盆地の大きさ・形状など)に大きく依存し、これらの性質は堆積盆地ごとにまちまちである。今、堆積層の厚さに着目する。参考として、日本最大の堆積盆地である関東平野の堆積層の厚さを挙げると、最も厚いところで4km程度である。このような厚い堆積層が増幅にとって重要であることを示すために、図1.2.7(→表層地質が地震動に与える影響-2)を示す。これは、2種類の架空の堆積層構造を仮定し(表1.2.1)、S波が真下から入射した場合に、最も深いところにある層境界と比べて地表ではどれだけ地震波が増幅されるかを、計算により求めたものである。この図からわかるように、地震波の増幅の程度を決めるのは、表層近くの浅い構造だけではなく、浅い構造と岩盤まで達する深い構造を合わせた厚い堆積層であることがわかる。
図1.2.6 箱根地震(1990年8月5日、M=5.1)の時の足柄平野での地動速度観測記録(東京大学地震研究所・工藤研究室による)