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2 地震と地震災害

伝播経路が地震動に与える影響

 地震波が地殻内を伝播する間に受ける影響として重要なものは減衰である。減衰は3つに区別される。
 1つは幾何減衰といわれるものである。これは,図1.2.4に解説するように、伝播距離とともに波の振幅が減少するという現象をさす。地震波の場合、最も単純には、実体波(P波とS波)の振幅の減衰は1/r(r:伝播距離)で、表面波のそれは1/ルート(r)で表される。
 2つめは内部減衰といわれるものである。これは、地震波が媒質(地殻内の場合は岩石)を伝わる間に、摩擦などにより波のエネルギーが吸収されるために起こる。3つめは、散乱減衰と呼ばれるものである。これは地殻内部の不均質構造のために、地震波が散乱されるために起こる。内部減衰と散乱減衰の効果は両者を合わせて、Qという媒質に固有な値で表現される。図1.2.5は、震源からある距離だけ離れた所で見た場合に、Q値によってS波部分の地動加速度スペクトルがどう変化するかを、簡略化した理論計算により示したものである。この図から、Q値が大きい媒質ほど、減衰の効果を持たないことが見て取れる。図1.2.5では、どの周波数の地震波に対しても媒質のQ値は一定であると仮定して計算しているが、実際には、1Hzより高い周波数でのQ値は、周波数とともに大きくなることが知られている。また、Q値は、地球内部の場所によっても異なる。この場所による違いは、ときに異常震域(@参照)を引き起こす原因に挙げられる。
図1.2.4 幾何減衰の解説 
面A上のエネルギーが面B上に伝わるが、面Bの面積は面Aの面積より大きいので、エネルギーの密度は小さくなる。即ち、波の振幅は小さくなる。
図1.2.5 Q値が地震動(S波部分)に与える影響 
この図は震源から出る地震波の周波数特性を適当に仮定し、ある距離だけ離れた地点での地動加速度スペクトルを計算したものである。Q値を考慮しない場合のスペクトルの最大値を1として表示している。表層地質の影響は考慮されていない。また、Q値はどの周波数に対しても一定であると仮定している。
(@)通常、震度は震央から離れるにつれ小さくなるが、これとは別に、かなり広範囲に渡って異常に震度が高くなる地域が現れることがある。このような地域は異常震域と呼ばれ、千島弧、東北日本弧、伊豆小笠原弧の深い地震の際に東日本太平洋側で経験されている。これは、以上に挙げたような震源からの地震波が東日本太平洋側に到達するまでに、Q値が大きい大洋プレートの中を伝わってくるためと考えられている。