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2 地震と地震災害

震源が地震動に与える影響

 震源断層にはある有限の大きさがあり、断層運動は断層全面で同時に起こるのではなく、ある破壊開始点から徐々に全体へ伝播していく。図1.2.2は地震の波形データと測地データから推定された、1995年兵庫県南部地震の震源断層の破壊過程を示したものである。図1.2.2(a)から、断層面上でのすべり量は一様ではなく、大きくすべる所とそうでない所があることがわかる。このような非一様なすべり量分布は、兵庫県南部地震に限ったことではなく、他の地震の破壊過程にも見られる。すべり量が大きい場所はアスペリティー(asperity)と呼ばれ、そこからは大きな地震波が放射される。震源断層近傍の地震動は、アスペリティーの大きさや位置により大きく左右される。図1.2.2(b)からは、この震源断層での破壊が明石海峡の地下で始まり、破壊が神戸側と淡路島側に伝播していった様子がわかる。断層面上の各部分から放射される地震波のうちで、破壊開始点から放射される地震波が最も早く地表面に到達する。気象庁発表の震源の位置は、この地震波の到達時刻から決定され、その震源はこの破壊開始点を指す。
 ある有限の広がりを持つ断層面上を破壊が進行することの結果として、破壊の伝播方向からみてある特定の方向の地震波が増幅される現象が生ずる。これは“指向性(directivity)"と呼ばれている。図1.2.3は理論的な計算により、指向性の原理を説明したものである。図1.2.3(a)は小さな断層(小さな地震)の場合で、断層を中心とする2本の対角線で分割される4地域それぞれで、震動の卓越方向が異なる(4象限型)ことがわかる。これは指向性とは別の“放射パターン(radiation pattern)"と呼ばれるものである。図1.2.3(b)は断層が大きさをもち(大きな地震)、破壊が左から右へ進行する場合である。4象限型の放射パターンとは異なり、断層半ばから右側、即ち破壊が進行する向きの側で、断層直交方向の震動が卓越することがわかる。図1.2.3(c)は指向性による増幅の結果、地震波の波形がどうなるかを示している。細い線は断層各部から放射される地震波である。それらが重ね合わさって増幅する結果として、大振幅で長周期のパルス状の波形(太い線)が形成される。
図1.2.2 地震の波形データと測地データから推定された1995年兵庫県南部地震の震源断層の破壊過程 *16)
(a)震源断層の位置と破壊開始から破壊が止まるまでの間に断層面上の点がどれだけすべったか(すべり量分布)を表したもの。色が濃いところほどすべり量が大きい。(b)すべり量分布を破壊開始から1.5秒毎に時間順に示したもの。例えば1.5<t<3と表示された図は、破壊開始1.5秒後から3秒後までの間のすべり分布を表している。
図1.2.3 紙面に垂直な右横ずれ断層における指向性の原理 *17)
右横ずれ断層とは断層面を境にして、ある一方の側から反対側を見たときのすべりが右横向きであるような断層のことである。(a)小さな断層(小さな地震)の場合に、各地点での地動速度が最大となる時点の震動方向。(b)断層が大きさをもち(大きな地震)、破壊が左から右へ進行する場合に、各地点での地動速度が最大となる時点の震動方向。(c)指向性による地震波の増幅的干渉の様子。