白籏史朗の自然歳時記
「ナナカマドの紅葉と燧ヶ岳」 |
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大清水から一之瀬をすぎ、岩清水から三平峠に登る。そこから下りついた尾瀬沼はそれまでの、秋たけなわの峠路と打って変り、すでに秋は盛りをすぎたかのように静かなたたずまいを見せていた。ブナやナナカマド、カエデ類の樹種のすくないこともその感を深めている。だが、尾瀬沼畔に立つナナカマドの大樹、それはいま真紅に燃えて、深々と澄んだ秋空に映え、すっくと立つ燧ヶ岳に対峠している。珍らしくも人っ子ひとりいないこの日、私は無上の幸を心ゆくまで味わったのだった。
写真・文 白籏史朗 |
消防科学総合センター季刊誌「消防科学と情報」1998年秋号より |
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